あべこべ迷子
「迷子のお呼び出しを致します。6歳の・・」と店内放送が流れ、息子の名前が呼ばれた。
あれ??
何で??
迷子になったの?
「僕がちゃーちゃんとおもちゃ見てるから、ママは1人でお買い物していいよ」と頼もしい言葉を残して、間もなく3歳になる妹の手を引き、おもちゃ売り場へ行ったはずなのに。
実家に帰省して近くのショッピングセンターへ子供たちを連れて行った時の出来事だった。
指定されたお客様カウンターへ慌てて向かう途中、おもちゃ売り場でしゃがみ込み、お人形を見ている娘が振り向き、ニコニコ笑った。
お兄ちゃんと、はぐれた事にも気付いていない娘を連れて、カウンターの近くまで行くと、不安そうな横顔が見えた。
名前を呼ぶと、嬉しそうに笑顔を見せた息子は、私と手を繋いでいる娘を見つけ「ちゃーちゃん、いたの?」と駆け寄り「迷子になったらダメでしょ」と頬ずりをした。
カウンターの店員さんと目が合って思わず笑った。
店員さんの話によると、妹を見失い慌てた様子の息子が「僕の妹が迷子になりました」とカウンターへ駆け込んだそうだ。
「お兄ちゃんの説明がとっても可愛いんですよ」
「◯◯◯って名前の僕の妹が迷子になりました。ピンクの服を着て髪を2つにしばった2歳の可愛い女の子です」と、グ-を握った両手を左右の頭にくっつけて説明したと、笑いながら教えてくれた。
6歳なのにしっかりしてますね…と、褒めてもくれた。
札幌のデパートで迷子のお知らせを聞いた息子の質問に「子供がいなくなって、お母さんが探しても見つからない時に、お店の人がいるあそこ(たまたま近くにあったお客様カウンターを指差して)に、名前と男の子か女の子か、どんな服を着てるかを言って、迷子の放送かけてもらうんだよ」と教えたことがあった。
ちゃんと覚えてたんだなぁ…
妹が迷子になったはずなのに、気が付けば、あべこべ迷子だったけれど(笑)
一人っ子の私にとっては、何とも微笑ましい兄妹の忘れられないエピソードで、今でもよく思い出す。
懐かしいあの日。
その頃の息子と娘
そんな2人も今では33歳と30歳になった。
職種は違うけれど、同じ医療職で話が通じる部分もある。
お婿さんも加わり、相変わらず仲の良い兄妹だと、母の目から見ても思う。
はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」