ママチャリ爆走族
私は自転車に乗れなかった。(今も乗れないに等しい)
生まれ故郷の室蘭は山坂が多く、子供の頃は山の中腹に住んでいたこともあり、自転車とはずっと無縁の生活をしていた。
アパートから町中に引っ越し、後ろに子供を乗せて颯爽と自転車で走るママさん達に憧れ、一念発起して自転車を買った。
もちろん乗れないので、近所の広場で必死に練習し、何とか乗れるようになると、早速子供用の椅子を取り付けた。
当時の椅子は、鉄か何かに黒い塗装をされた簡単な外枠に、それをクルクル巻いたものがグリップ部分としてあり、赤い座面が付いていた。
自転車の後ろに取り付けてすぐに娘を乗せてみた。
「ちゃーちゃん、ここにしっかり掴まってね。」
3歳になっていた娘は言われた通り、クルクル巻きのグリップを力いっぱい握った。
自転車初心者なので、すいすいと片足で漕ぎながらさっとサドルに座る技術などない。
自転車にまたがり、反動を付けて発進しなければスタートできないので、なるべく、できる限り止まりたくなかった。しかも、低速になるとふらついた。
そんなこんなで、娘を乗せて走る私の自転車は、疾走するどころか、爆走していた。
知り合いが車で通りかかった時に、娘を乗せた私の自転車を見かけ「ものすごいスピードで走ってたけど、どこに行くところだった?」と言われたこともある(汗)
ある日、停止しようとスピードを落とすとふらついて、そのまま自転車が倒れてしまった。
何とか支えようとしたので、倒れ方はゆっくりだったが・・
慌てて娘を見ると、泣くどころか真剣な顔をし、言われた通りにグリップをしっかり握ったまま自転車と一緒に斜めになっていた。
娘を抱き上げると、両手にクルクル巻きグリップの跡が、どれだけ強い力で握ってたんだろうと思えるほど、赤く縞々になって残っていた。
「ごめんねー、痛くしなかった?」と聞くと「痛くないよー」とニコニコ笑って、ほっとさせられた。
そんなことがあっても、娘は嫌がらずに私の爆走自転車の後ろに乗ってくれた。
小さい子供ほど、親は絶対なんだなぁと思った。
娘が幼稚園に通うようになるまでの2年間、爆走自転車で行動したが、運転技術は全く向上しなかった。
よく無事に2年間過ごしたものだ・・それ以降、自転車は殆ど乗っていない。
今、乗れるんだろうか・・?
🔺その頃の2人
娘3歳息子6歳